ふろしき Blog

コンテンツサービスを科学する株式会社ブートストラップ代表のブログ

IE11のユーザエージェント問題 - IT管理者側でできる対策(IEAK/Active Directory/modern.IEの活用)

古いWebシステムはIEに依存した処理を多く含む傾向にあり、企業内の標準ブラウザをアップデートする際に、IE11から変更されたユーザエージェントの書式仕様が問題となり正常に動作できない場合があります。

しかし、これを理由にしてアップデートを先延ばしにすると、古いIEに特化した業務システムを作り続けることになります。IEのアップデートが必要になった際には、大量の業務システムで「改修」の必要が生じ、コスト効果としては最悪の状態に陥ることになります。

新しいIEは、Web標準への準拠が高く、その上で動作するWebシステムも必然的に汎用的な作りとなるため、その後のIEアップデートで生じるコストも最小化させることができます。特にIE11は、Web標準への準拠が非常に高くユーザビリティ改善のための多くの手段(HTML5の利用)が提供できるため、Webシステムの健全化/高度化へ貢献してくれるでしょう。

本記事では、「IE11のユーザエージェント問題」に対して、Webシステムを扱うIT管理者の視点で、Windowsの持つ機能を駆使して、社内のIEに対して講じることができる対策とアイデアについてご紹介します。

IE11のユーザエージェント仕様の変更は、IEの特定のバージョンへの依存を減らすことを目的としたポジティブな改善です。既存のWebシステムについては本記事の対策により最小のコストで維持し、これから更改されるWebシステムについては、新しいIEの設計指針に従い、IEへの依存性を最小化したデザインを目指して下さい。

★ 対策内容一覧

  1. IEAK11を利用した対策
  2. ActiveDirectoryを利用した対策
  3. ローカル・イントラネット・ゾーンへの移行
  4. 動作のテスト手段

Microsoftは、Internet Explorerをエンタープライズ用途の製品の一つとして位置づけています。このため、Windows系OSやMicrosoftの提供する社内統制向け製品との親和性が高く、様々なIEの改善機能を提供しています。

1. IEAK11を利用した対策

IEAK(Internet Explorer Administration Kit)は、社内のIEの設定を統一化を行うためのMicrosoft公式ツールです。Internet Explorer Administration Kit (IEAK) Information and Downloadsにて、ダウンロードが行えます。

IEAK11は、IE11に特化した設定統一化ツールです。IEAK11を使えば、企業の保有するWebシステム向けにカスタマイズしたIE11インストールパッケージを作成したり、インストール済みのIE11に対して後から統一すべき設定情報を組み込むことができます。

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作業の流れは、以下の通りです。

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IEAK11は、互換表示に関する設定情報も含んでいます。互換性の設定情報を含んだ状態で、インストールパッケージの配布を行えば、既存の業務システムは互換モードの状態で表示させることができます。

IEAK11の互換表示として設定される情報は、IE11に含まれる「互換表示設定」画面上で設定された項目の全てです。互換表示対象として指定されたWebシステムは、IE7の動作をエミュレートして実行します。

マスターとなる環境のIE11にて、[設定ボタン]→[互換表示設定(B)]の順にクリックし、[互換表示設定]より変更が行えます。

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  • ①. 互換性表示リスト : 指定されたドメイン名に属するWebシステムは、互換表示されます。ここに予め互換表示を必要とするWebシステムのドメイン名を登録することで、既存資産の変更リスクを低減させることができます。
  • ②. イントラネット互換モード : ローカル イントラネット ゾーンと判断できるドメイン名に属するWebシステムは、互換表示されます。本機能はデフォルトでONになっているため、これを利用した対策も行えます。詳細は、次章にて紹介します。
  • ③. Microsoft互換性表示リスト : Microsoftから配布されたリストに含まれるドメイン名のWebサイトは、互換性制御の影響下に置かれます。イントラネット内のWebシステムは通常登録することが無いため、業務システムの場合、B2Cでない限り出番は無いでしょう。

IE11には、バージョン5から10までの動作をエミュレートするレンダリングエンジンが含まれています。これらのレンダリングエンジンを細かく制御して利用するには、Webシステムを動作させているサーバのミドルウェア製品の設定値を変更するか、Webシステムのプログラムに手を加える必要があります。このため、IT管理者向けツールからのコントロールでは実質的にIE7しか互換表示に利用できません。

IE6世代のWebシステムは、IEのアップデートの際にIE7互換モードへ移行しているケースが多いようです。このため、OSに強く依存した機能(WindowsAPIに強く依存した動作)を利用していない前提下では、問題は小さいものと考えられます。

2. ローカルイントラネットゾーンへの移行

2.1. ローカルイントラネットゾーンへの移動

(※この箇所は執筆中です)

2.2. 強引な手段

IEAKは、全てのIEのバージョンを11で統一する場合に有効な手段です。ただし、この方法では配布に手間が生じるため、規模の大きい企業では、IEAKで追加パッケージを配布するなどのメンテナンスのコストが大きい場合もあります。組織が巨大だと、IE11へのアップデートを促しても一斉に移行できないケースもあります。

状況によっては、IEの持つデフォルトの設定を利用して、互換表示切り替え方法を行う手段も視野に入れるべきでしょう。

IEはかつてより、ローカルイントラネットゾーン上のWebシステムについては、デフォルトで互換表示設定で動作する仕様です。つまり、互換表示が求められるWebシステムへ、IEがローカルイントラネットゾーンと認識できるようなドメイン名を与えれば、IEはWebシステムを互換表示で実行します。

IEがWebシステムをローカルイントラネットゾーン上に配置されていると判断する条件は、ドメイン名に「.(ドット)」が含まれていない場合です。「http://example.com/test.html」はexampleとcomの間に「.(ドット)」がありますが、「http://system01/test.html」は「.(ドット)」が含まれないため、ローカルイントラネットゾーン扱いとなります。

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社内システムの利用で専用のDNSサーバを社内で保有している場合、DNSサーバの設定を変更することにより実現できます。WINSの場合は、制約が加わる可能性があります。少々強引な技なので、あまり推奨されるものではないでしょう。

3. Active Directoryを利用した対策

Active Directoryの影響下にあるクライアント端末では、グループポリシー管理によりWebシステムへ互換表示を強制させることができます。運用中のInternet Explorerに対する対応策としては、最も堅実な手段でしょう。

http://www.danielclasson.com/guide-how-to-force-specific-sites-to-always-run-in-compatibility-view-using-group-policy/

http://www.atmarkit.co.jp/ait/articles/0905/27/news118_3.html

4. 動作のテスト手段

Microsoftでは、エンタープライズで利用されているIEのアップデートを促すため、Webシステムの互換性をテストするためのツールを揃えたサイト「modern.IE」を運営しています。このサイトでは、様々なバージョンのIEとOSの組み合わせをVMとして無償提供しており、動作のテストを行うことができます。

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IE11については、2013年11月現在、Windows7版とWindows8.1版の2つを提供しています。

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Webブラウザの動作は実装OSによっても変化するため、本サービスを利用して、できる限り本番環境に近い組み合わせでテストすると良いでしょう。

IE11のユーザエージェント問題 - 運用者側でできる対策(Apache HTTP Server/IISの設定変更)

運用しているWebサイト/システムがIE11からのアクセスへ対応できない場合、運用者側としてはHTTPヘッダを利用した対策を行うことができます。

対策可能な範囲としては、以下2つが挙げられます。

  1. アクセス元のWebブラウザの互換性モードを制御する
  2. アプリケーションへ透過的にIEであることを認識させる

前者はWebブラウザ上で動作が正常に行われなかった場合、後者はサーバ上のアプリケーションの動作が正常に行われなかった場合の対策です。どちらもミドルウェア製品のパラメータ設定の変更のみで対処が可能です。

当然ですが、これらの対処にはサーバの停止が必要になります。また、他の設定との競合などの問題により、動作が確実に保証されるものではないため、事前の動作検証が必要です。

1. アクセス元のWebブラウザの互換モードを制御する

サーバからIEの互換モードを制御して、IE10以下のWebブラウザの動作を再現させることができます。新規開発/制作では良い方法とは言えませんが、既存のWebサイト/システムを最小の変更のみで維持するには有効な手段です。

対策は、HTTPレスポンスヘッダへIEの互換モードを制御する、「X-UA-Compatible」というプロパティを追加することによって実現できます。どのWebサーバの製品を使うかによって、その制御方法は様々です。

ここでは、「Linuxベース(Apache HTTP Server)「と「Microsoftベース(IIS)」の2つのケースについて対策方法を解説します。

★ ApacheでHTTPレスポンスヘッダにX-UA-Compatibleを追加する

RHEL/CentOS/FedoraでApache HTTP Serverを利用している場合は、「/etc/httpd/httpd.conf」にて、一番最後に以下の内容を追記して下さい。

LoadModule headers_module modules/mod_headers.so
<IfModule headers_module>
   Header set X-UA-Compatible: IE=10
</IfModule>

Apacheに「mod_headers.so」がバンドルされていない場合はエラーになります。予め、インストールして下さい。

Apacheの場合は、「mod_rewrite」を用いたURLによる振り分けを行っているケースが多いでしょう。この場合、以下のルール変更のみで対応可能です。

# ✕ 従来の振り分け判定記述
RewriteCond %{HTTP_USER_AGENT} MSIE
# ◯ IE11対策された判定記述
RewriteCond %{HTTP_USER_AGENT} Trident

★ IISでHTTPレスポンスヘッダにX-UA-Compatibleを追加する

MicrosoftのWindows系OSで「インターネット インフォメーション サービス(IIS)」を利用している場合は、以下の手順になります。

「コンピュータの管理」→「インターネット インフォメーション サービス(IIS) マネージャー」
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「HTTP応答ヘッダー」
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表示内で右クリック、「追記」を左クリック
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「名前(N):」へ「X-UA-Compatible」、「値(V):」へ「IE=10」
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2. アプリケーションへIEであることを認識させる

ユーザエージェントが従来の方式でIEの判定が行えなくなった場合、サーバ上のプログラムが動作不良を起こしてしまうケースもあるでしょう。この場合、ユーザエージェントがサーバ上のプログラムへ渡される前に、従来の方式によって判定できるように偽装を行うことで対処できます。

Linux/Apacheの場合

Apache HTTP Serverには「mod_setenvif」と呼ばれるモジュールがあります。

元は第一次ブラウザ戦争時代に、NetScape用に作られたWebサイトをIEから入れないようにするために作られたものでしたが、今回はその逆で、Firefox(旧NetScape)のふりをしたIEを受け入れるために利用できます。時代の流れとは、恐ろしいものです。

http://httpd.apache.org/docs/2.2/mod/mod_setenvif.html

(※ 本記事は現在「執筆中」のステータスです。)

IE11のユーザエージェント問題 - 対策方法の全て

Internet Explorer 11のユーザエージェント問題 - 対策方法の全て

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Internet Explorer11へアップデートされてから1ヶ月。多くのWebアプリが動作不良を起こし、混乱が生じているようです。

IEは11から、「User Agent スニッフィング」と呼ばれる手段で、Webブラウザに依存した作り込みが行われることを防ぐため大胆な仕様変更を行いました。これまでWebブラウザ/バージョンの特定の手段として広く利用されていたユーザエージェント文字列から、重要な項目が削除されたのです。

ネット上では断片的な情報が散らばっているようですが、不十分な対策も多く見受けられます。そこで今回、対策の方法について体系的かつ網羅的に理解できるよう、4つの観点から整理してみました。

本稿が、読者の方が運用しているシステムへ万全の対策を行えることを、そして開発者がWebの正しい指針に従い開発を進める助けになれば幸いです。

IE11の設計指針「User Agent スニッフィング」の防止とは?

今回のIEの仕様変更は、少々強引とはいえ、Web技術にポジティブなインパクトを与えるきっかけになるでしょう。

IEは近年のWeb開発のお作法である「機能の有無によるクロスブラウザ型のWeb開発」という思想を広めるため、現在悪とされている「ユーザエージェント特定によるマルチブラウザ型のWeb開発」、つまりWebブラウザごとに個別の作りこみを行いにくい仕様へ徐々に移行を進めてきました。バージョンを上げるごとにユーザエージェントに含まれる.NETフレームワークのバージョンなどIE固有の情報を減らし続け、そしてバージョン10からは「条件付きコメント」の廃止という思い切った仕様変更を行っています。

サーバ側でIE/バージョンの特定を行うための実用的な情報は廃止しなかったため、サーバ側のミドルウェアへのインパクトはほぼ皆無でした。IEそのものがWeb標準への準拠が高くなったため、十分なマルチブラウザ対策が行われているサービスであれば、クライアント側でも問題は小さかったようです。

しかし今回、11へのアップデートでは、サーバ・クライアントの双方でWebブラウザの種類を判別するためにもっとも広く利用されている、ユーザエージェントの内容を大きく変更しました。この変更は、Webブラウザでの動作切り替えを行わないと現実的な開発が行えなかった3-5年以上前の古いWebアプリ・サイトで、動作不良を起こす原因となっています。また、JavaScriptのAPI経由でユーザエージェント情報を収集し動作を切り替えていたサービスでも、同様に問題となっているようです。

理想を言えば、このタイミングでIEに依存しない作り込みをサーバ側でも行うべきです。しかし実態としては、既存資産の維持へは最小のコストで対策し、次の更改まで維持し続けることが現場として求められることでしょう。本稿で紹介した4つの対策は、あくまで既存資産を延命させるための対策であるものと考えて下さい。新規開発であれば、これからご紹介する「クロスブラウザ対策」を参考に開発することが推奨されます。

正しい解決、クロスブラウザ対策

現在Webでは、Webブラウザの持つ機能の有無に応じて動作を変えるという手法が推奨されています。Microsoftが公開しているドキュメントからも、その思想が読み取れるはずです。

▼ 機能検出と動作検出の使用
http://msdn.microsoft.com/ja-jp/library/ie/ff986088(v=vs.85).aspx

MicrosoftのドキュメントではjQuery.supportを推奨していますが、より高度な機能を有したModernizrも有用です。その利用方法と思想については、本ブログでも記事としてまとめています。

▼ クロスブラウザ対応を助けるJSライブラリ"Modernizr"
http://furoshiki.hatenadiary.jp/entry/2013/06/29/220621

最後に、Microsoftが公開しているIE11の互換性/変更点に関するドキュメントを紹介します。

▼ ブラウザーの機能と互換性の変更点
http://msdn.microsoft.com/ja-jp/library/ie/dn467848(v=vs.85).aspx

IE11のユーザエクスペリエンスの改善の多くは、マルチデバイス時代への対応を意識したものが多いようです。今後のIEのアップデートでも、この傾向はより強くなるものと予想されます。

JSライブラリを利用した開発は高いユーザエクスペリエンスと相互運用性を確保できますが、デスクトップUIへ特化しているケースも多いように思えます。IEのバージョンだけでなくマルチデバイスへの対応もトータルに考えて、Web標準技術の利用ついて、考える必要があるでしょう。

IE11のユーザエージェント問題 - 開発者側でできる対策 (判定方法の変更/互換性モードの利用)

既存のWebサイト・システムがIE11で動作しない場合、ユーザエージェントの観点では以下の何れかで対策が可能です。

  1. navigator.userAgent文字列からの判定
  2. HTMLドキュメント内から、互換性モードの操作

上記の対策はどちらも、"課題"があります。

近年のWeb開発/制作の指針は、ユーザエージェントによる動作の切り替えではなく、Webブラウザの持つ機能による切り分けが推奨されています。あくまでここに書かれている対策は、既存資産を最小のコストで動作可能にするためのものです。

新規の開発/制作では、この記事を参考に対策して下さい。

1. navigator.userAgent文字列からの判定

IE11のユーザエージェントを、JavaScriptの「navigator.userAgent」から取得した場合、HTTPリクエストヘッダから取得するよりも多くの情報が得られます。しかし判定で利用する情報は、HTTPリクエストヘッダの時と変わりません。

▼IE10

Mozilla/5.0 (Compatible; MSIE 10.0; Windows NT 6.1; Trident/6.0; SLCC2; .NET CLR 2.0.50727; .NET CLR 3.5.30729; .NET CLR 3.0.30729; Media Center PC 6.0; .NET4.0C)

▼IE11

Mozilla/5.0 (Windows NT 6.1; WOW64; Trident/7.0; SLCC2; .NET CLR 2.0.50727; .NET CLR 3.5.30729; .NET CLR 3.0.30729; Media Center PC 6.0; .NET4.0C; .NET4.0E; NP06; rv:11.0) like Gecko

IE10まではMSIEの文字列とその直後の数字で、Webブラウザ・バージョンの判定ができていました。多くのサービスが、判定にはこの文字列を利用しているはずです。しかし、IE11からは「MSIE」の文字列が無くなり、バージョンを表す数字も削除されてしまいました。

ただし、Tridentというブラウザエンジンを判断する情報は残されています。また、新しく「rv:11.0」というバージョンを表す別の情報が追加されています。

注意が必要なのは、IE10までの「MSIE 10.0」の「10.0」の箇所は、互換性モードを利用した際にどのモードかに応じて変化しました。例えば、IE7互換モードであれば、「MSIE 7.0」といった具合にです。

しかし、IE11から追加された「rv:11.0」という情報は、互換モード動作時も同じ「rv:11.0」のままです。IE11をIE10の互換モードで動かしても「rev:11.0」という文字列は変わりません。

つまりIE11では、使っているレンダリングエンジン(Trident)であることの判定、どのバージョンのIEを使っているかという情報までは確認できても、互換性モードが有効な時にどのバージョンの状態で動作しているかまでは確認できません。

これらを踏まえたIEの判定、バージョンの判定は以下の通りです。

// IEであるか否かの判定
var isIE = false; // IEか否か
var version = null; // IEのバージョン
var ua = navigator.userAgent;
if( ua.match(/MSIE/) || ua.match(/Trident/) ) {
    isIE = true;
    version = ua.match(/(MSIE\s|rv:)([\d\.]+)/)[2];
}

上記のスクリプトを、Webブラウザの設定やHTTP Responseヘッダ、ActiveDirectoryなど他の設定手段を無視して確実に動作させるには、HTMLドキュメント内で以下の設定が必要です。

<meta http-equiv="X-UA-Compatible" content="IE=edge"> 

そもそもですが、本仕様はIE12まで継続されるかも不明です。Microsoftがこの手の実装を排除する指針である以上、ユーザエージェント周りにどのような変更が行われても不思議ではありません。

なお、上記と類似した実装をjQueryでも提供されています。状況によっては、利用してみるのも手でしょう。

▼plugin for the dependency problem
http://plugins.jquery.com/depend/1.1.5/

HTMLドキュメント内から、互換性モードの操作

IEがユーザエージェント文字列に「MSIE」を含んでいた時代の動作をエミュレートさせるよう、互換性モードを変更する制御情報を与えるという手段です。IEが最新でない状態で動作するためあまり良い方法ではありませんが、既存資産を維持する目的であればわりと一般的です。

以下の文字列を、HTMLドキュメントのhead要素内のできる限り序盤に配置することで実現できます。

<meta http-equiv="X-UA-Compatible" content="IE=10"> 

このmeta要素は、IEがバージョン10以上の場合に、IE10のレンダリングエンジンで動作するように指示するものです。IE10時代はユーザエージェントに「MSIE」の文字列が含まれていたため、これに依存したJavaScriptコードは正常に動作できるようになります。

HTMLドキュメント内でも、Webブラウザの制御を行うもの、例えば上記以外にも<meta charset="utf-8" />のようなタイプのものは、head要素の序盤に配置しないと有効になりません。今回紹介したUA-Compatibleも、割りと敏感な部類に入りますので配置場所には注意して下さい。

たまに新しく開発する業務システムでも、非常に古い互換性モード(Quirksモード)で動作させるような対処をしているという話を聞きます。しかしそれは、良くない対処方法です。今のところMicrosoftはIE5時代からの動作がエミュレートできるような機能を提供し続けていますが、今後それが維持されることまでを保証していません。そもそもですが、新規で開発するものをわざわざ下位互換のために提供した機能で動作させる事自体、ナンセンスであることは言うまでもないでしょう。

新規では最低でも、開発対象バージョンをUA-Compatibleの下限にする程度の対処に抑えましょう。使うこと自体は全く間違いではないのですが、使い所を間違いやすい危険な機能です。入門レベルのプログラマが、ネット上のブログからコピペしてしまうなんていう地雷を含む恐ろしい機能です。ご注意下さい。

IE11のユーザエージェント問題 - ユーザ側でできる解決策 (互換表示機能の利用)

IE11でのみWebサイト・システムへアクセスできない場合、以下の問題が考えられます。

  1. サーバ側でIE11からのアクセスを拒否している。
  2. IE11のレンダリングエンジンに問題があり利用できない。

以下の対策で、改善される可能性があります。

1. サーバ側でIE11からのアクセスを拒否している場合

この問題は、IE11のHTTPリクエストヘッダに含まれるユーザエージェント情報を元に、出力するHTMLドキュメントを変えているケースに生じます。IE11のユーザエージェントから、MSIEの文字列が削除されたため、サーバがWebブラウザの特定を行えず予期せぬ動作を起こしている状態です。

サーバ側で拒否されているかを確認するには、IE11に付属している「F12開発者ツール」の利用が有益です。対象のWebサイト・システムへアクセスしている状態で、F12を押下して下さい。

Webブラウザの下方に、F12開発者ツールの画面が表示されます。
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ツールの左下「の逆三角のボタン」を何度かクリックして下さい。
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一番下に見つかる「デスクトップPC風アイコン」をクリックして下さい。
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「ユーザーエージェント文字列」という項目を、「Internet Explorer10」に変更して下さい。
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この対策で表示されることが確認できた場合、原因はサーバ側の問題にあることが確定されます。不便ですが、アクセスする都度、本手順を行わなくてはいけません。Webサイト・システム管理者の改善を待たなくてはいけないでしょう。

ただし、次章の手順を実行すると状況が改善される可能性があります。

2. IE11のレンダリングエンジンに問題があり利用できない場合

IEには、Webサイトの利用者側で、特定のドメインに対する「互換性モード」の切り替えを行う機能を持っています。

Microsoftでは、IEをエンタープライズ用途(企業内向け)で利用されることを想定しており、ライフサイクルの長いシステムのプラットフォームとして利用されることを前提とした、様々な機能が提供されています。

互換性モードは、IEのバージョンアップを行っても、古いWebサイト・アプリを継続して利用できるよう、古いレンダリングエンジンの動作をエミュレートすることができる機能です。

以下の手順に従い、設定を試してみて下さい。

IEのウィンドウ右上にある「歯車アイコン」をクリックし、「互換表示設定(B)」をクリック。
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ドメイン名を入力し、「追加」をクリック。
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閉じるをクリックすると、IEは再びロードを開始し、古いレンダリングエンジンによる動作を開始します。IE11では、「互換表示設定」にて指定されたドメイン名(URL)のWebサイトは、「IE7」の動作を再現させます。

社内システム用途のWebアプリケーションでは、古いものはIE6用として開発されたものが多いという状況でしょう。IE8以上への移行では大抵の場合、IE5〜6の動作を再現させる「Quirksモード」でなく、「IE7互換モード」で動かすのが定番となっているようです。

IEの「Quirksモード」はバージョン10以降、IE5~6の世代には付随していない最新のWeb標準の機能が追加されています。したがって、IE6のかなりコアな機能を利用したWebサイトは、正しく動作しない可能性があります。

比較的機能の近い「IE7互換モード」を利用するのは現実的な手段であり、IE11のこの動作は理に適っていると言えるでしょう。

パッチによる改善

IEはセキュリティパッチを定期的にリリースし、不具合については基本的にそのままにしておくことで、安定したプラットフォーム提供を実現しています。

しかしIE11はリリース直後に信頼性に関わる問題が発覚し、急遽パッチが配布されることになりました。これを適用することで、かなり改善されたという声も聞きます。特に、Windows8.1を利用している方は、IEの最新化を行わないと最高のパフォーマンスは発揮できないものと考えてください。

▼Download Center(パッチの配布先)
http://www.microsoft.com/ja-jp/download/default.aspx

新しいIEは、ActiveXのようなIE独自のテクノロジーが減ったため、アップデートで動作不良を起こすリスクも減っています。企業をターゲットとしたゼロデイ攻撃は今もなお増えていますので、安全な運用を行うため、IEのバージョン最新化も計画的に進めていくよう心がけて下さい。

このブログの筆者について

川田 寛

コンテンツサービスの開発や運営代行を専門とする集団「株式会社ブートストラップ」の社長です。ネットではふろしきと呼ばれています。

2009年にNTTグループへ新卒入社し、ITエンジニアとしてクラウド技術・Web技術の研究開発と技術コンサルティングに従事。2015年よりピクシブに入社し、エンジニアリングマネージャー・事業責任者・執行役員CCOなど、様々な立場からコンテンツサービスの事業づくりに関わりました。2021年にメディアドゥへVPoEとしてジョインし出版関係の事業に関わったのち、2023年に独立しています。

関わってきたインターネット事業としては、ECサービスのBOOTH、UGCプラットフォームのpixiv(主に海外展開)、制作ツールのpixiv Sketch、VR・VTuber関連ではVRoid、Wikiサービスのピクシブ百科事典など、10を超える多様なCtoCコンテンツサービス。また、NTTドコモのすご得コンテンツ、メディアドゥのWeb3サービスであるFanTopなど、いくつかのBtoCコンテンツサービスにも関わってきました。

幸運なことに、私はコンテンツに関係する幅広いインターネットサービスのテクノロジー&ビジネスの知識を得ることができました。これを日本のコンテンツ発展に役立てたいと思い、株式会社ブートストラップを創業しました。

このブログでは現在、出版社やIPホルダー、ライセンサーといったコンテンツに関わる人々に向けて、インターネット事業に関するTipsや業界内のトレンドなどの情報を発信しています。私と話をしてみたいという方は、以下のフォームより気軽にご連絡ください。

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