ふろしき Blog

コンテンツサービスを科学する株式会社ブートストラップ代表のブログ

モビリティは今、どのように進化しているのか?

デスクトップPCだけじゃなく、モバイルやタブレット、ウェアラブルデバイスの特徴を活かして、仕事を良くしよう。それが「モビリティ」という考え方です。ただ、実際の所はデスクトップとモバイルを隔てる壁が大きかったりします。モバイルのセキュリティを高める程度の議論で止まってて、モバイルでできることの限界みたいなのにぶち当たっていたように見えます。しかし、クラウドの地盤が固まったことで、ようやく次の世界へと進みつつあるようです。

これからのモビリティとは!?

イマドキのモビリティとはどういうものなのか、そのイメージを掴んでみましょう。どの製品ベンダも提案している内容はそっくりなのですが、個人的にはマイクロソフトのPV「A Day in the Life of a CVP」が、結構ポイントを掴んでいて一番わかりやすかったです。

マイクロソフトも、WindowsのXP(体験:Experience)はとっくにサポート終了していたはずですが、体験を売ろうという姿勢は未だにサポート終了していないようですね。せっかくですので、一つの例として、ご紹介してみます。(※静止画だとわかりにくいので、想像で字幕を入れてお届けします)

やや緊張ぎみな雰囲気で車に乗り込む彼女。これから移動でしょうか?
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モバイルが電話会議ツールに早変わり。メンバと情報を入念に交換を始める
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お客様のビルへ到着し、タブレットでShare Pointサーバ上の資料を探しているように見えます
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会議室に入りました、いよいよ本番のようです。
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直前の作業はノートPCで。こっちのほうが、入力が楽ですしね。
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プレゼン中はタブレットに変化。手前のディスプレイにも表示
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おや?お客様から何やら意見が出てきたようです。
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焦燥する彼女。やばい、どうにかしないと!
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すぐにペンを取り出し、タブレットにそのままメモをとる
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終わったので帰りますよと、部下にスマートフォンでメールします。
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別の会議室では、スクリーンの予定表にタッチ。TV会議のセッティング
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お?会議室に人が入ってきました。彼女です!彼女が帰ってきました!
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真剣な眼差しで、スクリーンに色々書き込みながら客先訪問の内容を語る彼女
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部下たちも真剣です。というか、なんか凄くがっかりしてますね。あと国外でも、客先に行かない人は私服なんですね。そこは日本と一緒?
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モビリティ自体に馴染みがない人には、いやいやこれはぶっ飛び過ぎだろう、SFの世界ですか?といったところでしょう。ただ、従来の「モバイルだけ」「デスクトップだけ」に閉じていた状態でモビリティを体験していた人にとっては、痒い所に手が届き始めたなぁなんて印象を受けるに違いありません。このあたり、各ベンダは「流動的」とか「シームレス」という言葉で表現していることが多いようです。

モビリティ適用の入り口として、まずよく聞くのがマネージャの決裁業務のリアルタイム化です。通知させて、タッチで決裁を完了させる。またどこまで進んでいるのかを確認することを、デスクトップPC&メール通知という形式では到底敵わないようなエクスペリエンスとして提供するのです。これがメンバーレベルになると、予定表との連動。例えば、マイクロソフトのオフィスとかだと、ミーティングの前には通知のバイブ音が一気にブーブー鳴り出して、ミーティングルームに向かい始めるみたいです。彼らに言わせれば、こんなのはまだモビリティの入り口みたいなものなのでしょうが、モビリティを体験したことがない人には直感的で分かりやすい事例に思えます。

IBMでエバンジェリストをやっている佐々木 志門氏は、もはや研究家という域に達するほどのモビリティ人でして、腕にウェアラブル・デバイスを巻きつけ、Chrome OSやらAndroidやら、色んなノートPCとモバイル山ほど持ち歩いて何kgあるねんとツッコミたくなるようなかばんを持ち歩き、いろいろと活用の可能性を探っています。彼は腕についてるデバイスが、通知が来る都度スルーしたり反応してみたりと、モビリティやってますなぁという感じが見て取れます。その精神、すばらしい。ぜひとも勉強会にスーツケースを持ってくるようなキャラクターであってほしい。そんな感じで、彼らの様子見ている限り、モビリティはディスプレイの前に座っていることを前提とすることからの脱却というよりも、「通知」をどう扱うかが取っ掛かりとしてわかりやすいようですね。

これに加えて、スマートフォンはカメラもついているし、明るさも取得できるし、場所の取得もどんどん精度を上げてきているしで、できることの可能性がどんどん広がっています。近くの駅をアプリに探させて、タッチで入力すれば出張申請が完結できるような時代は、少なくとも10年後には当たり前になっているはずです。通知だけが全てでないし、これからも色んなモバイルの形が出てくるはずなので、そこにどんなアイデアを生み出すかがエンジニアの価値に変わるようにも思えます。

どうやって実現するのか?

こういうものを実現する仕組みは、MEAPだったりMaaSだったりで、結構色んな方法が出てきています。だいたい共通しているのは、持ち運べるようなコンピューターにはMDMやアクセス管理機能などのセキュリティ機能が入った箱庭を構築しており、大抵はクラウド(オンプレミスなものもある)との連携が大前提になっています。

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まだまだ先端という感じが否めず、業界標準に相当するものは見当たりません。OSSだけだと、まだまだ問題があって辛かったりもするので、私はベンダ製品もOSSも両方しっかり見るようにしています。

OSSの動向としては、まず、Mozillaは「FirefoxOS」に力を入れているので、あとは進化が停滞気味のOSSのメーラー「Thunderbird」のプロジェクトさえ本気を出してくれたら、いい感じにオープンなモビリティが始まるのだろうと感じています。そして、モビリティでは要となるオフィススイーツでは、オープンソースの「LibreOffice」がブラウザ上で動作させる「LibreOffice in a Web Browser」プロジェクトを立ち上げているので、このあたりが突破口になってくれないかと期待しています。

なので、Mozilla FoundationはそろそろLibreOffice開発チームとエコシステムを作って、「FirefoxOS + Thunderbird + LibreOffice」で、オープン・エンタープライズ・モビリティ的なことをやって欲しいなぁという淡い期待を抱いています。FirefoxOS前提だと微妙かもですが、クロスプラットフォームでこれをやろうとしたなら、マイクロソフトとIBMはほぼ間違いなくコミッターを出すし、そのうちGoogleからも出てくる。あとはエコシステムの調整さえしっかりすれば、世の中のモビリティの進化と普及は爆発的に進むでしょう。一応、OpenmobilityというOSSのプロジェクトは出てきているのですが、本記事でとりあげる「エンタープライズ・モビリティ」とは若干違う感が否めず、製品ベンダが動くような雰囲気には達していないように思えます。

一方で、ベンダ製品側はどうなっているのか。具体的なものを紹介しますと、マイクロソフトはWindows 8系やPhoneがそういう仕組みのOSになっていたりしてて、少しばかりのパッケージを追加すれば運用面のリスクを潰せるので、「Windows + Office 365」の組み合わせで、ちょっとしたモビリティを体験できるようになっています。彼らはWindowsに縛るつもりはなく「Visual Studio 2013(Multi-Device Hybrid Apps)」をリリースしていたりと、これからもっと色々幅を広げてきそうです。IBMといえばApple製品なので、「Apple製品+MaaS 360」という組み合わせになります。これに加え、業務アプリの開発は「Worklight」を活用して、不足を埋めていくイメージのようです。この2社、結構色んなものがぶつかっています。

オフィス製品抜きのビジネスソフト周りだと、サーバサイドやパッケージを売るベンダ。MEAPと呼ばれるものが中心です。SAPは割と強かなので、同社の強みを活かしたMEAP製品「Mobile Platform」を「BYOD」と謳い売り込んでいます。ただ、実際のところは私用端末を活用(BYOD)するより、企業で配布する形がベストですよという提案をしているようです。日本だとそのほうがいいよと、他の製品ベンダからも聞こえてきますので、国内だとモビリティの鉄板の進め方になるように思えます。オラクルも「ADF Mobile」が、今年の8月2日にようやくデバイス管理系の機能性を満足させてきたので、モビリティというムーブメントへ自然に乗っかってきている感触があります。オラクルはJavaとの親和性がいい感じで開発の道具が揃っているので、Java好きな人には楽しめるかもしれません。

【連載:モビリティとは何か?】
  1. モビリティとは何か?企業にモバイルが求められる理由
  2. モビリティは今、どのように進化しているのか?
  3. モバイルファーストじゃダメな理由、モビリティファーストに求められること(8/14)
  4. モビリティの価値を大きく変える、5つのキーワード(8/15)

このブログの筆者について

川田 寛

コンテンツサービスの開発や運営代行を専門とする集団「株式会社ブートストラップ」の社長です。ネットではふろしきと呼ばれています。

2009年にNTTグループへ新卒入社し、ITエンジニアとしてクラウド技術・Web技術の研究開発と技術コンサルティングに従事。2015年よりピクシブに入社し、エンジニアリングマネージャー・事業責任者・執行役員CCOなど、様々な立場からコンテンツサービスの事業づくりに関わりました。2021年にメディアドゥへVPoEとしてジョインし出版関係の事業に関わったのち、2023年に独立しています。

関わってきたインターネット事業としては、ECサービスのBOOTH、UGCプラットフォームのpixiv(主に海外展開)、制作ツールのpixiv Sketch、VR・VTuber関連ではVRoid、Wikiサービスのピクシブ百科事典など、10を超える多様なCtoCコンテンツサービス。また、NTTドコモのすご得コンテンツ、メディアドゥのWeb3サービスであるFanTopなど、いくつかのBtoCコンテンツサービスにも関わってきました。

幸運なことに、私はコンテンツに関係する幅広いインターネットサービスのテクノロジー&ビジネスの知識を得ることができました。これを日本のコンテンツ発展に役立てたいと思い、株式会社ブートストラップを創業しました。

このブログでは現在、出版社やIPホルダー、ライセンサーといったコンテンツに関わる人々に向けて、インターネット事業に関するTipsや業界内のトレンドなどの情報を発信しています。私と話をしてみたいという方は、以下のフォームより気軽にご連絡ください。

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