企業でのモバイル活用は関心の高いテーマです。昨年は、BYODという言葉が持て囃され、こちらもそれなりには関心が持たれました。
しかし、実態を見てみるとどうでしょう。InformationWeekが1月17日に公開した「5 Big Business Intelligence Trends For 2014」の主張からは、国外でもモバイルは企業内へ上手く浸透出来ていないという印象を受けます。万国共通して、モバイルの適用は一筋縄ではいかないようですね。
様々な異論が飛び交う「モバイル」と「BYOD」の2つのムーブメントですが、そのソリューションは高度化が進んでいます。企業向けシステムの構築方法、ITアーキテクチャの設計方法に変化を齎すような新しい流れが生じつつあり、企業向けモバイルアプリに一つの市場を作ったようです。
MEAP(Mobile Enterprise Application Platform)。言葉は2008年と歴史こそ古いですが、技術としての安定化が進み、またHTML5の登場で新たな進化の道が見つけられつつあります。このプラットフォームについて、これから4回の連載に渡り、その可能性を追ってみます。
モバイルではアプリを「隔離」させる
業務系のWebアプリについて、従来のデスクトップ型デバイスでは、セキュアな環境下でクライアントを動作させることを保証することで、セキュリティリスクを最適化させてきました。ブラウザの仕組みにせよ人的な脆弱性にせよ、「場所」に対して一定のセキュリティを確保することで対策してきました。
統合管理によるアクセス管理についても、Windowsが普及していたことから、Active Directroyの活用に改善が進められてきました。パフォーマンスも、前世代的なWebアプリは、主としてサーバサイドにフォーカスされていました。
ところが近年、モバイルの活用が求められ、企業システムは従来のデスクトップ型には無い独特の課題に悩まされ始めました。代表的なものとしては、以下が挙げられるでしょう。
パフォーマンス | モバイルデバイスのハードウェアリソース不足。不安定な通信回線。 |
セキュリティ | 持ち出し運び可能なハードウェア。平文では扱えない記録・通信データ。 |
マルチOS | iOS、Android、Windows RTなどの複数のOSの混在。 |
アクセスコントロール | グループベース・ユーザベースによる、アプリ・データへのアクセス権限付与の難しさ。 |
これらの問題に対して、BYODという切り口から解決方法が探られたようです。そして結果として、エンタープライズ向けのアプリは、モバイル上で扱う場合、「隔離された環境」の上で動作させてしまおうというアイデアが広がりを見せました。この仕組みは、どの製品もかなり類似した機能性を持つ傾向にあります。
共通点としては、以下のイメージです。
モバイルに隔離環境専用のアプリをインストールし、その上で業務で使うようなアプリを動作させる仕組みになります。アプリは、ワンソースでクロスプラットフォームに動作させることを目的として「ハイブリットアプリ開発」を活用します。従来のブラウザでは不足していた企業向けシステムに必要な機能、例えばセキュリティ・アクセス管理なども、OSから隔離されたこの環境に実装されます。
どのように開発するのか?
HTMLやJS/CSSのコーディングを行い、コンパイル(パッケージングとも呼んだりもする)という手続きを踏み、エミュレート環境や実端末上にインストールされます。デバッグは、この上で行うことになります。
フロントエンドは文化として、開発にはIDEに限定されず、オーサリングツールやエディタ+タスクランナーなどの多様なツールにより開発されます。隔離を行う環境は、独自のプラットフォーム上でアプリを動かす必要があるため、利用ツールやライブラリに多少の縛りを受ける傾向にあるようです。
どのように運用するのか?
企業向けの場合、IT管理者による業務アプリの管理・監視が必要とされるでしょう。これを実現するため、管理コンソール側から各隔離環境内のアプリの制御を行う機能を提供します。
どんな製品があるのか?
さて、一通りの概念的な部分の説明が終わったところで、ここからは具体的なソリューションに目を向けます。探せば色々出てくるのでしょうが、今回は以下3つの製品を探ってみましょう。
次回は早速ですが、Sencha Spaceをテーマとし、中身について触れていきます。
- そもそもMEAPとは?
- Sencha Space
- SAP Mobile Platform
- IBM Worklight