ふろしき Blog

コンテンツサービスを科学する株式会社ブートストラップ代表のブログ

モバイル界に真のオープンを 〜 FirefoxOSがもたらすもの 〜(Interop Tokyo まとめその2)

引き続き、Interopネタです。今度は日本語でしたが、伝わりにくいなぁと思った部分は、意訳っぽくしてみました。
あと、一部メモれていません。思い出して書いてます。

モバイル界に真のオープンを 〜 FirefoxOSがもたらすもの 〜

講演:Mozilla Japan 瀧田 佐登子
実演:Mozilla Japan 浅井 智也

瀧田:
実は私、2005年にもInteropで講演をしていました。その時私は、MozillaがWebのアプリケーションプラットフォームになると宣言していました。この予言は当たりました。

iOSが日本に上陸した時、モバイルが世界がこれだけ変わるとは誰が思ったでしょうか。去年の暮れあたりから、Firefox OS、Tizen、ubuntuなどが騒がれるようになりました。なぜ、第三のOSが騒がれるようになったのでしょう。

"すべての人にWeb体験を・・・"。Mozillaは非営利組織です。我々の活動は、インターネットをより良い世界にし、Web体験をすべての人にもたらすことです。そしてその活動は「インターネットを健全で良い物にしたい」と世界中からあつまったボランティアと共に、オープンなプロセスで行なわれています。Mozillaの活動を支えているのは、その殆どがボランティアです。

1998年〜2005年、当時はIEで良いなんて言われていました。企業が出したそのブラウザでいい。プラットフォームは十分に完成していて、「何を今更」だなんて思われていました。それが2005年、オープンなWebブラウザが出てきた時、再びWeb技術が動き始めたのです。そして、"HTML5"というパラダイム・シフトを起こしました。

皆様はどうでしょう?「Webがあるのが当たり前、Webに依存した生活」に変わったのではないでしょうか。皆とは言いませんが、Web無しで仕事ができない方が多いのではないでしょうか。Webはそういう状況に置かれています。そして、HTML5の先にあるものは何でしょう。モバイル界の現状は?スマートフォンのシェアは急速に拡大しました。現在のスマートフォン市場はApple社とGoogle社のほぼ2社独占体制で、かつて、PC会で起きていたブラウザの独占市場とほぼ同じ問題が起きています。HTML5を新しい軸としたパラダイム・シフトが進んでいます。

「プロプライエタリ→オープンへ」この意味を理解できますでしょうか?まさにこの会場、Interopそのものです。クローズドな環境でなく、開けたこういった場所で、皆が自分たちのテクノロジーについて公開している、まさにこの様子です。Firefox OSいよいよ、日本で本格的に始動!ここで、浅井から実演をしてみようかと思います。

浅井(実演の中から抜粋):
FirefoxOSを見た時、一見他のスマートフォンと何も変わらないように見えるかと思います。しかし、Mozillaは、これまでもこういうやり方をしてきました。かつて、InternetExplorerが独占状態にあった時、MozillaのFirefoxブラウザは、IEと似たようなインタフェースに、少しだけWebの進んだ技術を取り入れるというアプローチをしてきました。

IEと似せたインタフェース、そこに少しの進んだWeb技術、こうすることで、IEを使っているユーザからの移行を容易にするとともに、Webの進んだ技術を使えるようにしたのです。

今の実演の内容は、普通のスマートフォンでもできることですが、全て、Web技術を活用しています。ネイティブアプリケーションに見えるこのアプリのコードは、Webブラウザ上でも動くのです。新しいアプリケーションは、Webが最初に出てくることが多いですが、この端末は、こういった新しいアプリケーションを動かすことができる、今実演しているGoogleのストリートビューも、Webで公開されたサービスをそのままスマートデバイスで動作させているのです。

瀧田:
Firefox OSは、ブラウザで動くアプリケーションを、多くの変更を必要とせず、ネイティブアプリケーションのように扱える。PCのブラウザだけでなく、FirefoxOSを通じて、さまざまなデバイスからWebに繋がることが出来ます。HTML5などオープンなWeb標準技術を使用して開発できる。シンプルでスマートな設計。Web環境がより快適になります。

これらは、既存の独自仕様プラットフォームのような企業などの支配や制約を受けません。つまり、通信事業者やメーカーが自由に行えるのです。これこそが、マルチデバイス時代のアプリ環境です。

Telefonicaは、最初にFirefoxOSの開発に手を上げた企業です。新興国を顧客にすることが多い同社が、最初にFirefoxOSに賛同しました。ここで言えること、メディアは変な盛り上がり方をしていまして、FirefoxOSについても、同社が振興国のローエンドユーザを相手にすることが多いため、そういった用途のものとして捉えらます。

MozillaはスマートフォンのOSを作っているだけではありません。では、これから先は?組込み、車載やTVなど、さまざまなデバイスにオープンなプラットフォームを搭載される時代がきます。

Firefoxを使って一緒に何か実現したいことがあるなら、是非、協力して下さい。OSSは文化として、集まるだけではいけません。実際に開発にコミットして下さい。協力を求めています。

この内容から言えること・補足とか

「ローエンド向け」という表現について

まず、海外のメディアでもよく言われている「ローエンド向け」という戦略。私はここに、語弊があるのかもしれないと感じてます。「ローエンドも含む」という考えが正しいのかといえば、それも違うと思っています。今のMozillaの表向きに見える戦略が新興国特化に見えて、しかもそのプランがすごく明確にユーザ側にも伝わってきます、、が、実体としてはそうでなく、もっと他にもポテンシャルを秘めていると言いたいのでしょう。ただし、彼らのバックで支援している企業がいる以上、堂々と、ぼかさずには言えないのかもしれません。

なんとなくですが、彼らが遠回しに言いたそうにしていたこと。それは、HTML5というテクノロジーは、そもそもですが、コモディティ化された平等なプラットフォームであり、ローエンドか否かは実は重要でないということ。彼らの訴えたいオープンテクノロジーというのは、平等な立場、あらゆるエコシステムに対して、不平等な振る舞いをしない、安全なプラットフォームであるということでしょう。

AppleのSafariは、お世辞にもHTML5対応が優れているとは言えません。そうなった背景、それは、彼らAppleのエコシステムにとって、HTML5はFlashを排除するための手段だったからではないかと思います。HTML5はここまでのスピードでポテンシャルを獲得するとは、当時のAppleには考えられなかった。Safariは、Webにネイティブアプリケーションのユーザがとられないようにするため、Flashを排除するためのビジネス的戦略としてHTML5を活用し、そして最終的に、AppleIDへの依存性を高め、彼らの本業であるハードウェアを継続的に販売するというビジネスモデルに繋げたかったからなのかもしれません。HTML5の進化が、彼らのエコシステムにはポジティブに繋がらない。だからこそ、WebViewを含めた、彼らのWebプラットフォームは、ネイティブと同様のポテンシャルを確保するわけにはいかない。AppCacheなんてものを実装するなんて、それもう、とんでもないことです。(※これはあくまで、私の想像です。)

こういった背景の中、Mozillaの意図するのは、こういった特定の企業のエコシステムを偏重し、プラットフォームの機能性を下げたりするようなことはしないということ。FirefoxOSは、そういうポテンシャルを秘めたものだと言いたいのでしょう。HTML5がプロプラ的な、一部のビジネスモデルにばかりメリットの高いものでは無いように、FirefoxOSも、一部のビジネスモデルにばかり特化したものではないと、そう言いたかったに違いありません。

ただ、今は課題もあるから、「ローエンド」という言い方でブランドイメージの悪化を防いでいるように見えます。それは恐らく当人でなく、Mozillaを擁護したい、FirefoxOSを中心としたエコシステムに関わる企業側の思惑かもしれません。ただ、私の考えとして、今はそれでもいいと思ってたりします。

「HTML5を推進する者としてどうよ?」って思われるかもしれませんが、HTML5はバズワード化する次期が若干早すぎたように思えまして、HTML5.0版に含まれる膨大な仕様の吸収、また変更に対する柔軟な対応を行うには、多くのリソースを必要とします。ソフトウェアならなんとかなったにしても、OSともなると、ハードウェアも含めて、こういった課題に取り組む必要があると思うんです。安定化していない仕様に合わせてハードウェアを作るのは、これはとても大変なことです。ただ、どこかのタイミングでこうした課題が解消されるはずです。だからそれまで、イメージを下げて、真のオープンプラットフォームが市場の戦争に負けることだけにはなって欲しくないと私は考えています。

浅井氏の言う「他のネイティブと同じように」という表現について

この発言が出てくるには、HTML5を取り巻く背景を多少理解していないと、言わんとしていることが伝わりにくいと思いました。今のスマートフォンの持つポテンシャルを鑑みると、実はこれはとてもすごいことなんです。

抽象化されたAPIは当然、性能面での課題が多いのです。また、先ほども言いましたが、スマートデバイスはどうしても色んなエコシステムの影響を受けて、実装されない機能も出てきたりするものです。そんな中、しっかりとHTML5の機能を作りこみ、前向きにポテンシャルを探り、ネイティブと戦えるプラットフォームを作ってくるというのは、素晴らしいことではないでしょうか。

おまけ

Interop Tokyoに、FirefoxOSのブースがあったので見に行きました。

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  • 日本語入力出来る版の端末は、Googleの検索画面が壊れてしまいました。
  • 日本語入力できない版は、大丈夫っぽいです。
  • しかし、私が作ったWebGLアプリケーションは、表示できずに壊れてしまいました・・・。チューニングが必要そうです。

やはり出来立てなので、課題は多いですね。端末買って、色々ノウハウ貯めてみようかな・・・。

最後に

っということで、色々と変な哲学ちっくなことも語りましたが、Interop TokyoはHTML5などのWeb技術について、新しい発見をと良い機会を、多く与えてくれたと感じております。(なんか英訳チックな書き方になってきたな・・・)

オープンスペック、オープンテクノロジーが最終的に、素晴らしいエコシステムを社会に作ってくれる、コモディティ化された仕様の検討、実装の開発が、コンピューティングに革新を与えてくれると信じている川田は、これからも、Mozilla様を応援しております!

このブログの筆者について

川田 寛

コンテンツサービスの開発や運営代行を専門とする集団「株式会社ブートストラップ」の社長です。ネットではふろしきと呼ばれています。

2009年にNTTグループへ新卒入社し、ITエンジニアとしてクラウド技術・Web技術の研究開発と技術コンサルティングに従事。2015年よりピクシブに入社し、エンジニアリングマネージャー・事業責任者・執行役員CCOなど、様々な立場からコンテンツサービスの事業づくりに関わりました。2021年にメディアドゥへVPoEとしてジョインし出版関係の事業に関わったのち、2023年に独立しています。

関わってきたインターネット事業としては、ECサービスのBOOTH、UGCプラットフォームのpixiv(主に海外展開)、制作ツールのpixiv Sketch、VR・VTuber関連ではVRoid、Wikiサービスのピクシブ百科事典など、10を超える多様なCtoCコンテンツサービス。また、NTTドコモのすご得コンテンツ、メディアドゥのWeb3サービスであるFanTopなど、いくつかのBtoCコンテンツサービスにも関わってきました。

幸運なことに、私はコンテンツに関係する幅広いインターネットサービスのテクノロジー&ビジネスの知識を得ることができました。これを日本のコンテンツ発展に役立てたいと思い、株式会社ブートストラップを創業しました。

このブログでは現在、出版社やIPホルダー、ライセンサーといったコンテンツに関わる人々に向けて、インターネット事業に関するTipsや業界内のトレンドなどの情報を発信しています。私と話をしてみたいという方は、以下のフォームより気軽にご連絡ください。

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