ふろしき Blog

コンテンツサービスを科学する株式会社ブートストラップ代表のブログ

【Interop Tokyo 開催20会記念特別対談】Web of Human, Things and Data(Interop Tokyo まとめその1)

ティム・バーナーズ=リーといえば、WWWの発明者です。彼は今、W3CでWeb技術のディレクションを行う立場にあります。

今回は、2013年6月12日、幕張メッセで開かれたInterop Tokyoにて、ティム・バーナーズ=リー氏と、慶応義塾大学の村井純氏の対談の内容について、私のつたない英語力で意訳した内容を載せようと思います。

【Interop Tokyo 開催20会記念特別対談】Web of Human, Things and Data

ワールドワイドウェブコンソーシアム・ディレクター ティム・バーナーズ=リー
慶応義塾大学 環境情報学部 学部長・教授 村井 純

ティム:
インターネットとWebの違い、これを語るには長い時間が必要だ。今日ここで与えられた時間は、十分でない。このあたりの事情については、この会場にいる皆さんは理解して頂きたい。今日は出来る限りのお話をしようと思うが、足りていないところについては、この後の対談の中で補っていきたいと思う。

まず、インターネットができたのは69年、Webができたのは89年だ。同じではない。89年、当時の文章システムのポータビリティに問題があると感じていた。コンピュータ・システムには相互運用性が無かったのだ。当然、グローバルなハイパーテキストシステムは、当時誰も関心を持たなかった。

しかし、私の上司は、私のアイデアに興味を示してくれた。上司は私に、Webのプログラミングの時間を与えてくれた。サーバもクライアントも全部作った。HTTPとHTMLも作った。その時は今に比べてずっと簡単だったと思う。なぜなら、その開発は誰にもみはられることが無かったからだ。

92年、93年だったか、Webは会社によって、今後の戦略を左右する重要なものと認識されるようになった。学者なんかも集める必要が出てきた。コンソーシアムを作った。AT&T、IMTとも話をして、最終的にIMTを中心に進めることにした。

今W3Cはすごく面白いことを行なっている。オープンなプラットフォームはもはや、ドキュメントを単に共有するものではなくなったのだ。Web自体がプログラムであり、Web自体が大きなコンピュータになったのだ。

Webアプリこそが未来だと思う。W3Cは多くのWGを持っていて、ロケーション系、データのローカルストレージだとか、ネイティブでできることが、どんどんWebでできるようになった。

今、私は何に期待しているか。データのパワーだ。これは、20年前から辛いと思っていた。ドキュメントがネット上にいっぱいあったけど、データのリンクができい。グラフひとつとっても、他のグラフを持ってきて、自分の作った情報とマージさせるのが大変だった。データ同士がうまく連携できないのだ。

データがパワーを持つ。これは、オープンデータという形でプッシュしていきたい。イギリスであるプロジェクトがあって、そこでは地方自治体があつまって、データをオンライン化しようとムーブメントがおこっている。イギリスは一番はじめにこういう取り組みを行った国。しかし、イギリスはまだまだだ。郵便番号がまだ使い勝手が良くない。

日本のみなさんは、政府の方で是非プッシュして、政府の方にデータをオープンにしてもらえるよう、進めていければと思う。オープンWeb、データ技術を、オープンプラットフォームを使って頂きたい。


ただ、その前提として、TCP/IPの上にあって、Wifiの上にあって、レイヤーを理解して頂きたい。みなさんは、上のレイヤーに対して関心が有ると思う。しかし、下の方のレイヤーにも関心を持つべきだ。なぜなら、下のレイヤーもオープンであるべきだからだ。下のレイヤーも常に、中立であるべきだ。

ネットが中立と言われている国は素晴らしい。多くは宗教など、何かしらの差別問題を抱えている。これは良くない。だからこそ、中立であることは素晴らしいこととなんだと思う。だからこそ、オープンであることを求めて欲しい。

こんな事件があった。アメリカの政府が、かなりのスパイをしている。インターネットを通じて、人々のかなりの情報を取得しているという。それは下のレイヤーから得られたのであろう。それぞれのレイヤーを使う時、すべてがオープンであるべきだ。でないとこういうことになってしまう。

村井:
Webの歴史を手短に語って頂きました。また、あなたの生い立ちについても、語って頂くことができました。その中で、WebApp、ネイティブAppの話がありました。様々なタイプのアプリケーションがあって、サイロ化している気がしています。Webプラットフォームは共通のものです。利用者から見ると、ネイティブアップを好む傾向があります。エンジニアの立場から見てどう思いますか。

ティム:
iOSのための開発をすると、同じようなツールを使うことになる。90年の頃に使っていた、同じツールを使うことになるんだ。デベロッパーの方は、出来る限り簡単に作れるようにということを努力していると思う。

あるものに関しては、スピードが必要となる。ネイティブをつかうか、Webを使うかでスピードが違うかもしれない。このケースで、スピードをもたらすことができるのではないだろうか。

オープンであることで、メリットが得られるかもしれない。ローカルストレージもつかえる、ロケーションお使える。今後は、Webアップの方に進むと思う。多くのスペック(※W3Cが公開している標準化ドキュメント)もコンソーシアムから出てきている。もし不足しているのであれば、コンソーシアムへ指摘して頂きたい。そうすれば、将来的には、JavaScriptであっても、ネイティブより上を行き、Webがネイティブを置き換えることになると思う。

村井:
標準化ということで、W3Cは今、そういう意味では、標準化を行なっていますよね。オープンデベロップメントというのが重要で、Webプラットフォームとしての、例えば、大画面・中画面・少画面にかぎらず全部、どんなハードウェアであっても、Webに関わっていけます。

W3Cとして、積極的にこのあたりについて標準化を行なっているということですが、お聞きできないでしょうか。

ティム:
なぜAPIに着目しているかというと、プラットフォームが安定、すなわち静的であり続けることができるからだ。JavaScriptのプログラマに、コーディングのスタイルを、よりナチュラルな形にしていきたい。

W3Cについて、Webの可能性を限界にまで引き延ばそうというのが我々の取り組みだ。そして・・・

( -- 聞き取れませんでしたm(_ _)m -- )

村井:
オープンデータについて語られていましたが、日本の場合、オープンデータは少し遅れているように思えます。私の場合、国のオープンデータ制作を色々やっていると、それがよく理解できる。

オープンデータ自体はわかります。ただ、私はこう聞かれることがある「オープンデータとインターネットとWebアーキテクチャをどう理解すべきか」あなたなら、どう答えますか?

ティム:
ワールドドキュメント。すごく大きなデータというのは存在する。個人の診療データなど。あと、為替の情報とか、円とドル、色んな数字があると思うけど、重要なのはほんの一部の小さなデータだ。

データが繋がるのは色々ある。例えばソーシャルウェブなどもそうだ。ただ、ある意味、これは一般化はできないと思うんだ。あんまりジェネラルな、一括りにはしたくない。

だからこういう時、私は5スターモデルというのを使うようにしている。

1スター:それはそこに置いてある、ただの紙に書かれているドキュメントだ。薄い本もあれば、分厚い本もある。それらはどれも同じくこれになる。

2スター:

( -- 聞き取れませんでしたm(_ _)m -- )

5スターデータ:
ライセンスもついている。政治も絡むから色々難しいところですが、5スターは、リンクもしている。東京にいるということは、・・・
5スターデータまで行けば、・・・

( -- 聞き取れませんでしたm(_ _)m -- )

村井:
本当に素晴らしいことですね。私は、政府のしごともしてきました。こういった理想的なデータの形をつくっていけたら素晴らしい。データがオープンになれば、先ほど自然災害のことをおっしゃっていましたが、私たちは沢山の経験を、インターネットに関して言えば行なってきた。世界中から様々な支援を頂けました。

ただ、皆が、情報を欲していました。欲していたのに、情報を得ることができませんでした。また、オリンピックのWebサイトに関わっていた。世界中に見られるので大切なものでした。

Webアクセシビリティについて、あなたはどう思いますか?

技術的には、ドキュメンテーションシステムを統合すべきだ。どこの企業にも偏るのでなく、ユニバーサルに、どんなOSであっても、どんなプラットフォームであっても、どんなデバイスでなくてはいけない。アクセシブルでなくてはいけないのだ。色んな障害があるとはおもうが、それでも、データにアクセスできなくてはいけない。アクセシビリティは、大きな可能性を引き出してくれる。

これに関して、私は「文句をどんどん言って下さい」と皆に働きかけた。良くするために必要だからだ。会社によっては、資金を出してWebアクセシビリティに取り組んでいるものもいる。

メリットは、アクセシビリティを確保すると、デバイスから独立した形にすることができる。昔は、800pxのコンピュータしか、インターネットコンテンツを扱えなかった。Webサイトは800x600しか受け付けることができなかったのだ。

しかし、これはおおきな間違いだった。その後、色んなデバイスが出て来た。400pxのものだってある。デバイスからの独立性がいかに大事かということがわかったかと思います。この時計のような小さなデバイスでも、HTML5を動かせるプラットフォームが出てくるかもしれない。デバイスからの独立性、これがHTML5にとってすごく大切なことだ。


村井:
アクセシビリティというのは、W3Cの中でも重要な施策として理解しています。ただ、ここはInteropなのだ。近隣諸国からも来ている方もいる。だからこそ、聞きたい。

この国、また我々を地域性を含で、なにかアドバイス・メッセージはありますでしょうか?


ティム:
まず、グローバルワールドだから、ボーダーゼロだから、国境は無いから、みんな参加すべきだ。これは前提だ。ただ、地域問題はあると思う。日本の政府があまりにもWebアクセシビリティをプッシュしていないのであれば、それも問題と言えるだろう。アメリカの場合、逆にアクセシビリティが法的に担保されて無くてはいけないこともある。

私は恵まれている、私は英語をしゃべる人間だから。マイノリティではない。英語以外を喋る人。マイノリティ言語。例えばインド、あそこには色々な言語があるんだが、そういう場所では、自言語のWebコンテンツが揃っていない。そうなれば、自分たちの文化を、Webで発信していくことが責任なのかもしれない。

自分の言語が、Wikipediaに入っているのかという問題だってある。自分のカルチャーを発信していくことは大事。もっとちいさなコミュニティ、例えば、ダンスが好きだ、花が好きだ、それもコミュニティ。多様性はキープすべき。だからこそ、発信していく責任がある。それを、英語というインタフエースを使って、相互運用性を保つこともできるかもしれないけど・・・

村井:
っと、時間切れのようです。最後にみなさん、感謝の拍手を送ってほしい。

このブログの筆者について

川田 寛

コンテンツサービスの開発や運営代行を専門とする集団「株式会社ブートストラップ」の社長です。ネットではふろしきと呼ばれています。

2009年にNTTグループへ新卒入社し、ITエンジニアとしてクラウド技術・Web技術の研究開発と技術コンサルティングに従事。2015年よりピクシブに入社し、エンジニアリングマネージャー・事業責任者・執行役員CCOなど、様々な立場からコンテンツサービスの事業づくりに関わりました。2021年にメディアドゥへVPoEとしてジョインし出版関係の事業に関わったのち、2023年に独立しています。

関わってきたインターネット事業としては、ECサービスのBOOTH、UGCプラットフォームのpixiv(主に海外展開)、制作ツールのpixiv Sketch、VR・VTuber関連ではVRoid、Wikiサービスのピクシブ百科事典など、10を超える多様なCtoCコンテンツサービス。また、NTTドコモのすご得コンテンツ、メディアドゥのWeb3サービスであるFanTopなど、いくつかのBtoCコンテンツサービスにも関わってきました。

幸運なことに、私はコンテンツに関係する幅広いインターネットサービスのテクノロジー&ビジネスの知識を得ることができました。これを日本のコンテンツ発展に役立てたいと思い、株式会社ブートストラップを創業しました。

このブログでは現在、出版社やIPホルダー、ライセンサーといったコンテンツに関わる人々に向けて、インターネット事業に関するTipsや業界内のトレンドなどの情報を発信しています。私と話をしてみたいという方は、以下のフォームより気軽にご連絡ください。

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