ふろしき Blog

コンテンツサービスを科学する株式会社ブートストラップ代表のブログ

HTML5は脱バズワードできるのか?エンタープライズ特化のHTML5カンファレンスを開催する

conference2013年、HTML5というキーワードは大声で散々語られ、メディア側もそれを極力注目されるように報道してきました。そのことが、多くのエンジニアへありがちなバズワードという認識を刷り込み、不安な印象を植えつけたことも少なく無かったようです。

ただこれは、Web標準という非常にプレイヤーが多様な技術にも関わらず、コンテキストの異なる意見が横並びにされ、それが結果として混乱を誘う結果に繋がったとも受け取れます。ブラウザの中でグリグリ動き回る動画なんかを見ていると、確かに凄いんだけれども、それって自分たちの相手にしているユーザ企業のどんな価値に変わるんだ?と。通信手段が進化して、それでどうなるんだ?なんて、そこにある種の不信感を抱いた人も少なくないはずです。

テクノロジーの価値は本来、業界・環境に合った視点から語られるべきです。エンタープライズにとっての価値とは、ゲーム業界や電子書籍業界のそれとは、異なって当たり前でしょう。

流れを変えるべく、私は一つの企画を立ち上げました。
それが「Enterprise x HTML5 Web Application Conference 2014」です。

本記事では、この企画の「拘ったポイント」をご紹介します。

1:プラットフォームだけにフォーカスしない

これまでHTML5と言えば、専らブラウザなどのWebプラットフォームの機能にフォーカスされました。ポテンシャル向上は確かに有益ですが、SIでそれを扱うには、満足できない多くの課題を持ちます。

SIでの開発では、規模が大きいプロジェクトで安定して品質・進捗を把握したり、要員のスキルが安定しないといった特性へ、アプローチすることを求められるマネージャも多いでしょう。営業であれば「HTML5だから」なんて言葉では、その価値を十分に訴えられない。テクノロジーとして、ユーザの価値に直結するアイデアが求められるでしょう。

本カンファレンスは、こうしたプラットフォームのポテンシャル以外の部分にも注目し、開発プロセスでどう取り組むべきか、提案としてどういうものがあるか、といった、より高いレイヤーで語るセッションを含めています。恐らくそれは、ベンダー系のセッションに多く含められているはずですが、サーバの内側にいない、ユーザに見える場所のモノ作りを商品としている彼らから、何かエッセンスを得られるのではないかと期待しています。

ここ数年、営業ポジションがモックアップを作りユーザに見せるためのツールが増えました。ジャスミンソフトの「Wagby R7」に、Senchaは「Architect」、グレープシティは「Forguncy」と、これらはインタフェースこそ異なりますが、明らかに非エンジニアを意識したツールです。今後は、こうしたツールを活用し、ユーザのイメージとの乖離を小さくしていく取り組みが、ユーザ満足度向上の要になることが予想されます。

また、ビジュアルデザインについてはUI/UXが注目され、国外はユーザビリティエンジニアという職種が力を持ちます。オープンな技術であるWeb標準が表現力を獲得したことから、こうした考えも、コスト競争下に置かれた環境で影響力を持つことになるかもしれません。

本カンファレンスは、これらWeb標準技術を取り巻く変化から、何かしらのアイデアが得られる場になればと考えています。

2:テーマを被らせない

セッション内容を被らせない、本カンファレンスはここに重きを置きました。

今回のベンダ、実は私が直々に声をかけた企業だけが参加しています。本カンファレンスはお金を取ることは考えておらず、運営はボランティア主体、スポンサー費の余りは全て、懇親会と決済代行を行っている株式会社びぎねっと様へ還元します。こうした環境が、コンテンツの選定から制約を取り除くことに一役買いました。大前提は、テーマを被らせないこと。それぞれがコアコンピタンスを持ち、彼らのカラーを武器に製品の良さを語れると、聴講者に持ち帰るものは大きいと考えたからです。

これを言うとスポンサーに怒られそうですが、テーマとして扱う製品については「使うか使わないか」は考えなくていいと思っています。従来には無い概念も多いため、まずは、今のフロントエンドの製品のポテンシャルに触れて欲しいというのが私の率直な考えです。それも、「エンタープライズ」というターゲットにフォーカスされたものにです。

オープン系についても全面にプッシュしています。コミュニティセッションの殆どが、ユーザグループの代表ばかりが揃い、本の著者まで出てきてその製品の良さを語ります。彼らの目から、Web標準技術へのアイデア、技術的な価値について存分に語られることでしょう。

エンタープライズ向けのWeb標準特化型カンファレンスとしては、この国内では未だかつて無いほど濃い時間が過ごせるよう、調整に調整を重ねました。

3:今の延長で語る

Web標準技術を活用したシステムは、かなり普及しています。2000年以降、PHPやJavaの普及がその勢いを後押ししてきました。

米調査会社のガートナーは今から1年前、エンタープライズ領域において、2016年にはハイブリットアプリケーションの50%以上がHTML5を活用すると予測しました。ただ、この1年ですっかり状況は変化し、ハイブリット以外にもそのノウハウが求められるようになりました。

マイクロソフトがWindows 8系以上のOSで、レガシーIE資産を捨てて、HTML5世代のWeb標準に準拠することを強制し始めたこと。彼らは、OSというレイヤーに多くの競合が出現し、今やビジネスモデルそのものにメスを入れ始めています。CEOは変わりましたが、彼らが彼らのビジネスを守る姿勢はこれまで以上に変わらないはずです。ますます、コモディティ化されたクライアントプラットフォームとしての、Web標準が重要視されることでしょう。

こうした背景の中、本カンファレンスはまず、今のWeb開発プロジェクトに慣れた人が、今の延長で現状の問題の解決方法を発見して欲しい、という想いがあります。今のスキルセットの延長に新しい道を見つけれられないか、と考えています。

質の良し悪しはありますが、それでもHTMLを書いてきた人は世の中に確実に大勢いるわけで、そういう場に直接的に持ち帰るものがあるのは素晴らしいことです。当然、今の現場を変えることに抵抗がある方は多いでしょうが、同じことの繰り返しが結果を生み出せなくなったケース、FlexやSilverlightのような技術の代替が求められているケース、スマートデバイス向けに対策を行わなくては行けないケースと、待ったなしで課題は生じ、リスクばかりを取っていられない現場もあるでしょう。

奇抜でなく着実な選択ができる、我々のコミュニティはそういう技術を追い求めてきました。そして本カンファレンスも、例外なくその方針を貫いています。探ってみて下さい。何かが見つかるはずです。

最後に

エンタープライズという枠で語るのだから、本来であればより広い視点で語るべきかもしれません。しかし、今回はひとまず「SI」にフォーカスさせて頂きます。まずSIが幸せになる道を、模索してみようかと思います。

私を含め、コミュニティのスタッフ全員の様々な想いをのせたカンファレンスが、まもなく開催されます。どうぞご参加下さい。

このブログの筆者について

川田 寛

コンテンツサービスの開発や運営代行を専門とする集団「株式会社ブートストラップ」の社長です。ネットではふろしきと呼ばれています。

2009年にNTTグループへ新卒入社し、ITエンジニアとしてクラウド技術・Web技術の研究開発と技術コンサルティングに従事。2015年よりピクシブに入社し、エンジニアリングマネージャー・事業責任者・執行役員CCOなど、様々な立場からコンテンツサービスの事業づくりに関わりました。2021年にメディアドゥへVPoEとしてジョインし出版関係の事業に関わったのち、2023年に独立しています。

関わってきたインターネット事業としては、ECサービスのBOOTH、UGCプラットフォームのpixiv(主に海外展開)、制作ツールのpixiv Sketch、VR・VTuber関連ではVRoid、Wikiサービスのピクシブ百科事典など、10を超える多様なCtoCコンテンツサービス。また、NTTドコモのすご得コンテンツ、メディアドゥのWeb3サービスであるFanTopなど、いくつかのBtoCコンテンツサービスにも関わってきました。

幸運なことに、私はコンテンツに関係する幅広いインターネットサービスのテクノロジー&ビジネスの知識を得ることができました。これを日本のコンテンツ発展に役立てたいと思い、株式会社ブートストラップを創業しました。

このブログでは現在、出版社やIPホルダー、ライセンサーといったコンテンツに関わる人々に向けて、インターネット事業に関するTipsや業界内のトレンドなどの情報を発信しています。私と話をしてみたいという方は、以下のフォームより気軽にご連絡ください。

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